女性の社会進出が進み、子どもを育てながら働くママたちが増えています。共働き世帯の数は1996年~1997年ごろを境に専業主婦世帯の数を上回り、2019年の共働き世帯は1245万世帯、専業主婦世帯は582万世帯となっています(出典:男女共同参画局ウェブページ)。共働き世帯の数が、専業主婦世帯の約2倍となっていますね。共働き世帯が増えた現在、家事や育児、仕事に大忙しな働くママたち、そして夫婦に向けて、国がさまざまな支援を行っているのを知っていますか?
- 仕事と育児を両立していきたい!
- 国の制度はあんまり詳しくないな…
- ちょっと調べたことはあるけれど、要点だけ簡単に知りたい!
という方へ、国が行っている支援についてお話しします。今回ご紹介する支援は以下の3つです。
- 育休の概要と2021年度の改正内容
- 幼児教育・保育の無償化
- 産前・産後サポート&ケア
改正によって特にパパが使いやすくなった育休!
育休(育児休業)は知っている方も多いかと思います。育休は、「育児介護休業法」という法律による制度です。働いている人が仕事と育児(介護)を両立できるように支援する、という目的を持つ制度です。育休を取得できる人と期間は、
取得できる人:1歳未満の子どもを育てる労働者(※契約社員など有期雇用の方は、会社に雇用されて1年以上でかつ、子どもが1歳6か月になるまでに契約終了しないことが条件です)
取得可能期間:原則、子どもが1歳になるまでの間
となります。
この育休ですが、実は2021年6月に内容の改正がありました。改正のポイントは以下の4つです。
①これまでの育休(子どもが1歳になるまでの間に取得できるもの)に加えて、産後8週間以内に、最長4週間の育休が取得できるようになった。
②申請期限が、“休業の1か月前“ から”休業の2週間前“になった。
③育休を2回まで分割して取得できるようになった。
④労使協定を締結している場合のみ、労働者が合意した範囲で休業中に就業することができるようになった。
パパも育児休業を取りやすいように、という思いが込められている今回の改正。
②のように申請期限が緩和されれば、日々子育てに奮闘しているママとまだ小さい子どもの状況に合わせて、休業のタイミングを少し調整しやすくなりますね。また、④のように休業中であっても就業することができれば、「仕事に穴をあけてしまう」ということに責任を感じているパパの心情としても、育休を取りやすくなりそうです。
ポイント③の「育休を2回まで分割して取得できる」という点については、ママも使うことができます。働きながらの育児休業が今までより柔軟になりますね。今回の改正は、2022年4月から徐々に導入される予定です。
育休明け、復職を予定されている方は、「育児休業給付」を受け取ることができます。申請は事業主(会社)を経由して行いますので、育休取得前に総務担当者に確認しておくとスムーズです。
幼児教育・保育の無償化について知りたい!
2019年10月1日からスタートした幼児教育・保育の無償化。日本は、先進国の中でも幼児教育の家計負担が大きい国です。先進国37か国(経済協力開発機構の加盟国)について、幼児教育の家計負担平均が16%であるのに対し、日本は34%と、ほかの倍以上となっています。このような状況に対し、家庭負担が大きいとますます少子化が進んでしまうのでは? と考えた政府が幼児教育・保育の無償化を実施するにいたったのです。
働きに出るために子どもを幼稚園などに預けたいという方にはとても嬉しい制度ですね。無償化の対象となっているのは、3歳から5歳までの子どもの幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育の利用料です。幼稚園については無償化の上限があり、無償となるのは月額2.57万円となります。残念ながら、無償となるのは利用料だけなので、送り迎えの費用や行事費などは今まで通り親の負担となってしまいます。
また、幼稚園の預かり保育は“保育の必要性の認定”を受けた場合のみ、一部が無償となります。
“保育の必要性の認定”ってなんなの? というと、例えば、
- 子どもの年齢が3~5歳
- 親がフルタイムやパートタイムで働いている
の場合は「2号認定」となり、保育所や認定こども園を利用することができる、といったように、幼稚園や保育所などの施設を利用する場合に必要な市町村の認定のことを言います。
子どもの年齢や親が働いているかどうかなどの状況によって、幼稚園を利用できるのか、
保育所を利用できるのか、それとも地域型保育なのか、というように利用できる施設が変わってくるのです。
“保育の必要性の認定”は市町村が取りまとめているので、必要なときは住んでいる市町村に問い合わせてみてください。
厚生労働省の支援事業” 産前・産後サポート事業&産後ケア事業“ってなに?
産前・産後サポート事業&産後ケア事業とは、簡単にいうと、
医療や保健、教育、福祉などがお互いに連携して、妊娠~子育て期のママたちを社会全体で支えていこう!
という事業です。
妊娠や出産、そして育児はママに負荷がかかり、不安や悩みはつきもの。そんなとき”身近に相談できる人がいない“となると、さらに不安になってしまいますよね。また、かつてないほど忙しい毎日や、子どもをしっかり見ないと! という責任感によって、心身に不調をきたしてしまうことも。産後しんどいママはぜひ利用していただきたい制度です。
実際にどんなことを行っているの? というと、具体的には下記のような内容になります。
■産前・産後サポート事業
対象者:身近に相談できる人がいないなど、支援を受けることが適当と判断されたママたち
実施者:地域の母子保健推進員・NPO法人、子育て経験者・シニア世代(※研修を受けた者)、保健師、助産師、保育士など
支援の方法:アウトリーチ(家庭訪問)型、デイサービス(保健センターなどに訪問する参加型)、電話・メール相談
■産後ケア事業
対象者:心身の不調があったり育児不安があったりするママたち
実施者:助産師、保健師、看護師。必要に応じて、心理学や育児等に関する知識がある者を置くことができる
支援の方法:ショートステイ(病院などに泊りがけでの支援)、デイサービス(病院、保健センターなどに通う)
どちらの事業も、支援を受けるためには「子育て世代包括支援センター※」の利用者である必要があります。子育て世代包括支援センターは、全国2,052箇所、1,288市町村に設置されています(2020年4月時点)。詳しい設置状況は、厚生労働省のウェブページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite)で確認することができます。
※子育て世代包括支援センター
妊娠期から子育て期の様々な悩みに対して総合的な支援を行う拠点。改正母子保健法の施行により、市町村に設置の努力義務があります。
まとめ
今回は、子育て中の家庭に向けて国が行っている公的支援を3つご紹介しました。妊娠や出産、育児を通して喜びもたくさん感じられますが、仕事との両立への不安や、誰にも言えないしんどさがつきまとうことも多いもの。いざというときに制度を活用できるよう、事前に知っておくと安心ですね。みなさんがこれらの制度を上手に活用して、幸せな家族生活を送れますように! と心から願っています。
参考URL
■育休
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html (育児・介護休業法について 厚生労働省)
https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/balance_research_202003.html (令和元年度 家事等と仕事のバランスに関する調査報告書、男女共同参画局)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html (厚生労働省 Q&A~育児休業給付~)
■幼児教育・保育の無償化
https://www.asahi.com/articles/ASL9C416WL9CUTIL011.html (朝日新聞デジタル 幼児・高等教育の家計負担、日本は世界最高レベル 公開日:2018年9月13日)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/musyouka/gaiyou.html ((幼児教育・保育の無償化概要、内閣府)
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/sukusuku.html (よくわかる「子ども・子育て支援新制度」、内閣府)
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/08/15/1419586-5.pdf (幼児教育・保育の無償化について、令和元年8月2日内閣府・文部科学省・厚生労働省)
■産前産後サポート事業・産後ケア事業
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000488884.pdf (第2回妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会(ペーパレス) 資料、厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172988.html (子育て世代包括支援センター業務ガイドライン、産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドラインについて、厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000139067.html (厚生労働省 子育て世代包括支援センターの実施状況)