コロナ禍で罹患者が激増している産後うつ。以前にもまして社会問題として意識されていますが、まだまだ支援の手が行き届いているとは言えません。当事者以外からみると、産後うつママたちがどのように辛いかわからないでしょう。また、産後うつ状態になったのち、どのように過ごし回復していくのかイメージがしづらいと思います。
今回は、当事者ママが産後うつの回復に専念するために、保育園を利用したケースをご紹介します。
産後うつとは
出産の後に母親が精神的に不安定な状態になることを言います。軽度であれば1カ月ほどで治ると言われていますが、重症化すると長期間の療養が必要です。もし適切な治療を受けられない場合はママ本人だけはなく、生まれた子どもの生死にも関わります。実際にに事件になった例もあるほどです。大げさに言っていると思った人もいらっしゃるかもしれませんが、10〜15%の母親が産後うつになった経験があると答えるデータさえあります。産後うつは軽視できない疾病です。
なぜ産後うつの治療に保育園が必要なの?
抑うつ状態の回復に必要なのは休養です。特に産後うつの場合は、子どもと距離を置く時間をもうけ、ゆっくり休むことが回復への近道と考えられています。
産後のママは出産という大きな出来事を乗り越えてすぐ、休みのない育児が待っています。特に乳児期の子どもは24時間の育児が必要で、健康なママでも落ち込んだり涙してしまう状態になるケースが多くみられます。まして、心も体も疲れている産後うつの状態では育児をしながら休まることができません。そのため、昼間だけでも子どもを保育のプロに任せ、少しでも休むことをおすすめします。
保育園に入園するメリット
他にも保育園に入園することによるメリットがあります。
・栄養満点の給食
・成長に合わせた保育(断乳、離乳食、トイトレ等)
・集団生活で養われる情操教育
・長期休みなく預かりが可能(基本的に夏休みなどがない)
保育園は保育のプロである保育士さんが常駐し、子どひとりひとりに合わせた保育をプロの手によっておこなわれます。育児のプレッシャーに押しつぶされそうになっている産後うつママにとって、一緒に子どもの成長を見守ってくれる人の存在が、一番心強いかもしれません。
就労以外の保育園入園条件
では、産後うつママは保育園にどのように利用できるのでしょうか。保育園は就労している人のものと思われがちですが、実は違います。確かに就労している世帯が利用されているケースが多いですが、親が就労していない場合でも、育休中でも保育園を利用できる場合があります。
特に、産後うつママは心身とも就労できる状態ではないことが多いです。体調不良が回復せず、そのまま退職してしまうケースがあります。子どもを保育園に入園させるため無理に就労するママもいますが、かえって病気が悪化してしまうこともあるので慎重に検討した方がよいでしょう。
保育園は就労以外でも以下の理由で利用が可能です。
【就学】 | 学校教育法に基づく大学、短期大学、高等学校などにおいて就学していること。職業能力開発施設も対象。1日◯時間以上、職業訓練を受けていること、という基準があります。 |
【疾病】 | 保護者が病気や怪我の場合です。医師が作成した診断書により保護者の疾病もしくは負傷が確認できる状態にあることとなっています。 |
【障害】 | 保護者が病気や怪我で障害者手帳を保有している場合になります。自治体により、障害者手帳の提示のみであったりコピーの提出が必要な場合などまちまちです。診断書は必要ありせません。 |
【親族介護】 | 家族で介護が必要な人がいる場合になります。1日につきおおむね○時間以上同居の親族その他の者を介護することを常態としていること。といった自治体ごとの基準があります。 |
【災害復旧】 | 災害で保育できない状態になった時に利用できます。自宅及びその近隣地域内の災害の復旧にあたっていることが条件です。 |
【求職活動】 | 仕事を探している時に利用できますが、保育園の利用開始から◯日以内に仕事を見つけることが条件となっち得る場合が多いです。 |
【発達援助】 | 心身に発達の遅れのあるお子さんが、保育園で過ごしたほうが良いと判断された場合に利用できます。そのお子さんの障害の程度が、自治体の定める基準を満たしていることが条件。 |
【産前産後、育児休業】 | 産前産後は、出産予定日8週間前(多胎妊娠の場合は、14週間前)の日から出産日後8週間を経過するまでの期間内にあること。また、育児休業は、下の子の育児休業中で上の子について家庭で保育をしている場合が該当。対象となる子どもの年齢など、自治体ごとにルールがあります。 |
以上のように、保育園を利用できる世帯は、就労している世帯ばかりではないことがわかります。
産後うつは「疾病」か「障害」のケースが多い
先程紹介した保育園を利用できるケースに、「疾病」と「障害」がありました。このどちらかを利用すると就労していない、できないママでも保育園の利用が可能です。
疾病で保育園に預ける方法
疾病で預ける場合、ママが通院していることが前提です。産後うつの場合であれば精神科や心療内科に通院するのが一般的でしょう。疾病で保育園を利用する場合、自治体のフォーマットで記入された診断書が必須となります。医師に病気によって家庭で保育できないという診断書を書いてもらうと、自治体によっては就労と同等もしくは–1〜3点で保育が必要と認められます。
障害で保育園に預ける方法
障害で預ける場合、障害者手帳が必要です。既に所持している人は疾病で記載した診断書の提出は必要なく、手帳の提出だけで手続きは完了です。診断書を待つ必要がないですし、病院に書類代を払う必要もありません。もし、まだ手帳を所持していない方で、今後手帳の取得を検討されているのであれば、以下の手順が一番スムーズでしょう。
- 医師に障害者手帳の診断書を記載してもらう
- 障害者手帳を取得
- 保育園必要書類提出
障害者手帳を所持していると、自治体によって保育料が減免される場合があります。産後うつは思うように就労できず経済的不安がある人が多いです。減免など支援を受けられたら一つの安心材料になりますね。ただし、障害者手帳を取得にためらうママもいらっしゃると思います。また疾病名によっては障害者手帳の対象外になる場合もあります。手続きを進める前に、ご家族、医師とよく相談されるのをおすすめします。相談をしてから検討してみてください。
意外と知らない年度中の途中入園
保育園に入園できるのは新年度の4月だけではありません。保育園に空きがあれば年度の途中入園も可能です。産後うつで辛い毎日を過ごしているのに新年度まで待つのは産後うつママにとって負担です。また、二人目以降の出産で産後うつになったママも、上のお子さんの入園を検討してみるのも良いでしょう。少しでも人の手を借りて心身ともに休める手段のひとつとして保育園の利用を考えてみてください。自治体によっては緊急措置として産後うつママを優先的に保育園に入園させてもらうこともあるそうです。まずは担当の保健師さんやお住まいの自治体に相談しましょう。
私は子どもを保育園に預けて、やっとプロの人にみてもらえる、夫婦以外の人で子どものことを考えてくれる人がいる。という安堵感がありました。特に我が家は頼れる親族が近くにいなかったので、身内よりも保育士さんの存在が大きく、日常の細かなことをいつでも相談できる最初の相手だったと言えます。あの時、私達夫婦と同じように子どもを愛し、その手で抱っこしてくれる保育士さんが私達の支えでした。いま苦しんでいるママがゆっくりと休めるようにぜひ保育園の利用をおすすめしたいです。皆さんの心の負担が少しでも軽くなりますように。